最近英語論文の書き方について書いたパンフレット(pdf)を読んだので紹介。十ページあまりのもので、書き方の技法については数ページなので簡単に。またこれは経済学の院生を対象としたものなので、そのまま応用できないところもある。
(この件について前に書いたエントリはこちら)
著者の主張は単純だ。論文を書くときにやることは主に二つしかない。
- 論文で書きたい主張(モデルから出てくる結果)を明確にして
- それを最短距離で説明する
というもの。論文で書きたい主張というのは、いわゆるthesis statementで、論文を書く目標は読者にそれを理解してもらうことだ。著者は、その目標を達成することにわれわれは全勢力を注ぎ込むべきだという。著者によれば、例えば文献批評はほとんど必要なく、roadmap paragraph(イントロの終わりにおく、X節で...をし、Y節で...をすると説明するためのパラグラフ)も同様。論文を書くときにはそうしたものはすべて省略し、読者がthesis statementを理解するために最小限必要な前提を説明するだけでよい。
ただわたしにとって役に立ったのは、細かいところで明晰さを促進するための技法が紹介されていたところだ。たとえば
- thatの前に注意。例えば、``It should be noted that...''とか``It is worth noting that...''とかついつい書いてしまうが、これは本当に必要なのか。たんに``..."の部分だけ書けばよいのではないか。
- いらない括弧に注意。コメントを括弧にくくってのせる必要はない。削除すればよい。
- 繰り返しはダメ。"in other words"とか書き出したら何かがうまくいっていない兆候だ。
- 受動態は避けよ。論文を書いたあとに"is"を検索して、出てきた受動態を削除せよ。
- 咳払い文(``throat-clearing" sentences)------トークで本題に入る前に咳払いをするように、本題に入る前に置かれがちだが、論文の内容の理解には貢献しない文------を削除せよ。
- はだかの"this"に注意。"this"が何を指しているか明確でないことがある。
こうした点を応用してチェックリストを作ってみた。段落ごとに引っかかる点がないかチェックする(上のパンフレット以外からもポイントを借用しています)。
- その段落のトピックセンテンスは何か?
- トピックセンテンスは段落の冒頭にきているか? そうでない場合、きちんとした理由があるか?
- トピックセンテンスは読み手にとってわかりやすいか?
- 括弧が多すぎないか?
- 長すぎる文はないか? もっと短くできないか?
- ``it should be noted that..."みたいに、``that''の前が省略できる文はないか?
- 不必要な繰り返しはないか? ``In other words"は何かがうまくいっていない警告かもしれない。
- 不必要な受動態はないか?
- 咳払い文はないか?
- 何を指しているかわかりにくいはだかの``this"はないか?
とはいえ、こうした点をチェックしていても、proofreaderからは真っ赤になった文章がかえってくることが常なのですがw