越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 (ディスカヴァー携書)
- 作者: 越前敏弥
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2013/01/11
- メディア: 新書
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翻訳家として活躍する著者が、翻訳学校などの講師を務める中で多くの人にとって意味をとるのが難しい英文をあつめた本。なかなかに難しい英文が並んでいて、正直に言うと一割強ぐらいの文章でわたしもまちがえた。とはいえ著者は文法に基づいてどう読んでいくのが正しいのか説明してくれるので、いたずらに特殊で難解な文章をあつめたという感じはない。
ということで色々と蒙が啓かれたのであるが、ひとつだけ気になる点があった。著者は206頁で
George Bush's victory in the 2000 presidential election was an extremely narrow one, with a controversy over who won Florida's electoral votes, among others.
という文章を
2000年の大統領選でのジョージ・ブッシュの勝利は、他の歴代大統領たちのそれと比べてはるかに僅少差のものであり、しかもフロリダの選挙人を誰が獲得したかにまつわる議論を引き起こした。
と訳している。ここでのポイントの一つは文末の"among others"がどこにかかるのかということなのだが、著者は"a very narrow one"にかけていて、"Florida's electoral voters"にかけるのは誤りとしている。しかしここでは"a controversy"にかけるというもう一つの選択肢があって、そちらの読み方も可能である――というか、むしろこちらのほうがよいのではないかと思える。つまり「色々論争を巻き起こしたけれども、フロリダの選挙人の取り扱いはその一つ」という読みだ。
著者は"a narrow one"の"one"と"among others"の"others"の結びつきを強調するが、手元の文章のデータベースを検索しても"among others"となった場合は両者には特定の結びつきはないように見えるし、むしろ"among others"がかかるのは直前に来る単位(語・語句)の方が多いと思う。