まとまり日記

私はこういうときでも自分がいじけなかったこと、力むことなくそういう風に育ったのが母への感謝なのである。これは大きかった。恥ずかしさの容量が大きいのは強いのだ。見栄を張らないで生きること、これは何よりも大きな糧である。(森信雄)

科学的態度の重要性と科学否定論者との対話

(タイトルなどはAIに考えてもらいました)

最近ほとんどエントリを書けていませんが、多少は仕事をしておりまして、本日監訳をした書籍が出版になります。

これは科学哲学者かつ前著『ポストトゥルース』が話題になったリー・マッキンタイアの本です。この本については後でエントリを書くつもりですが、一言で言うと科学者がもつ「態度」に着目して、科学と非科学にまつわるさまざまな問題を分析していく本です。

「科学と非科学」というと、科学哲学に知識のある人は線引き問題(境界設定問題)を思い浮かべると思います。これは科学と科学でないもの(占星術創造論、陰謀説など)を区別するような基準を探し求める問題で、前世紀の科学哲学では主要な問題の一つでした。これが議論された背景の一つが、アメリカでの創造論の隆盛を背景に科学と疑似科学を区別することが社会的な意義を持ったことがありました。

しかし伊勢田哲治さんの本『疑似科学と科学の哲学』で描写されているように、両者を区別することは簡単ではなく、さまざまな試みが提案されてきましたが、いずれも批判に曝されてきました。

本書ではマッキンタイアは科学者が持っている二つの態度――経験的証拠を重視する態度、そして自説に不利な証拠が出た場合に自説を破棄することも厭わない態度――を「科学的態度」と名づけて、科学を疑似科学陰謀論などから区別するものとして重要であると主張します。

本書の後半ではこの「科学的態度」という概念を用いて、科学とそうでないものの境界線にある問題――気候変動などについての否定論、陰謀論、研究不正、社会科学の科学性――などについて分析していきます。

ということで、科学とそうでないものの境界線に関わる問題に関心のある読者にとっては興味のある論点が詰まった本です。書店などで手にとっていただければ幸いです。

なおマッキンタイアについては来月にももう一冊訳書が出版される予定です。

こちらは出版社からの紹介を見ると、本書で「科学的態度」を持っていないとされた人々――否定論者、陰謀論者、疑似科学支持者など――とどう対話するかについて書かれているようです。本書ともどもよろしくお願いします。