まとまり日記

私はこういうときでも自分がいじけなかったこと、力むことなくそういう風に育ったのが母への感謝なのである。これは大きかった。恥ずかしさの容量が大きいのは強いのだ。見栄を張らないで生きること、これは何よりも大きな糧である。(森信雄)

AIについての三冊

「AI・ロボットの倫理」を扱う授業を行う関係でAI関係の本をいくつか読んだので紹介しよう。わたしが読んだのはAIを自分で作ったり活用する本(例えば機械学習のしくみを学ぶ本)ではなくて、テクニカルな詳細にはたち入らずにAIの歴史やAIの問題を紹介する…

読みやすい文章の書き方:期待をコントロールする

読みやすい文章を書くためのコツは色々とあるが、一つ重要なのは読者の期待(予測)をコントロールすることである。これはどういうことかというと、「これからわたしがどういうことを・どういうやり方で語るか」ということが読者にわかるように書いていくこ…

陰謀論と政治

陰謀論を扱った二つのポッドキャストを聞いた。一つは陰謀論と政治に関わるFivethirtyeight(FTE)のポッドキャストで、もうひとつは地球平面説を扱ったScientific Americanのポッドキャスト。このうちだと前者の方が紹介する内容が多いので、以下ではFiveth…

コンピュータのしくみ・歴史についての五冊

わたしはコンピュータ科学の学部に勤めているので、科学史の授業でコンピュータ史を扱った。わたしはコンピュータの歴史やしくみには全くの素人だったので、その際にそこそこに本を読まなくてはならなかった。その中から役に立ちそうなものものを紹介する。…

研究者のためのメンタルヘルスマネジメント:7つのコツ

という記事が『ネイチャー』に載っていたので簡単に紹介。著者はスペインの臨床心理学者。書いてあることはそれほど目新しいことではないかもしれないが、現下の状況でここで確認・共有することには意義があるだろう。 期待を下げる:授業がなくなった大学に…

「パンデミック時のニュートン」からの教訓

新型コロナウイルスの流行で多くの学校が閉鎖されている。しかしそうしたことの予期せざるよい面を見ようとして、ニュートンのエピソードが話題になることがある。曰く ニュートンが微積分法、光と色の新しい理論、および万有引力の理論という大きな発見をし…

エルンスト・ヘッケルの研究不正

エルンスト・ヘッケル(1834-1919)の研究不正の事例について科学史の授業のためにいくつか論文を読んだが、授業ではほとんど使わなかった(二枚スライドを作っただけ)ので、またこの事例は日本語で検索してもあまり記述が出てこないので、ここでメモ。ヘッ…

科学者の歴史についての四冊

教えている「科学史」の授業で、どのようにして科学者が今のようなあり方になってきたのかについて講義した(専門用語では「科学の制度化」という)ので、その準備に使った四冊を紹介。科学の真理は永遠に不変なのだろうか (BERET SCIENCE)作者:中根 美知代,…

道標が大切

最近は論文のドラフトなどを読む機会が多くなっているが、そこで気になることの一つは道標(サインポスト)がないために読みにくくなっている文章が多いことだ。サインポストというのは、これから書く文章についてのメタレベルからの説明である。例えば「こ…

酸素の発見についての四冊

「科学史」の授業のために酸素の発見史についていくつか読んだので、その感想。ただし酸素の発見史に一冊すべて充てている本は日本語ではないと思うので、以下の感想は「化学史の入門書の中で酸素の発見史の部分に関するもの」ということになる。化学史への…

研究費の配分をクジで決める

研究費の配分を(一部)くじで決めているという『ネイチャー』誌の記事を読んだ。これを行っているのはニュージーランドの健康科学評議会(Health Research Council of New Zealand)という政府の組織で、2015年にくじを導入した。くじで研究費の配分を決め…

"I insist that ..."は「わたしは・・・と主張する」ではない

日本語の哲学の論文を読むと、英語の要約部分で結構な確率で「I insist that p」が使われているのを目にする。例えばciniiで"I insist that"で検索すると、500件ぐらいヒットする。英和辞書を読むとinsist that pは「~と主張する」と書いてあるので、著者の…

瀧本哲史著『ミライの授業』のメンデルの記述は大幅に間違っている

高校生に出張授業をする準備のために『ミライの授業』[isbn:4062200171:detail]という本を読んだ。 しかしこの本のメンデルにかんする部分(204-210頁)は大幅に間違っている。著者はメンデルについて次の三つのことを述べている。

21世紀の哲学教科書

授業準備のために最近Philosophy: Asking Questions - Seeking Answers作者: Stephen Stich,Tom Donaldson出版社/メーカー: Oxford Univ Pr発売日: 2018/08/10メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見るを買ってめくっているが(H/T @kasa12345)…

齋藤孝「質問力」

質問力 ちくま文庫(さ-28-1)作者: 斎藤孝出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/03/10メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 43回この商品を含むブログ (86件) を見るを読んだ。よい質問をするための方法を教える本。著者はこれからの社会を生き抜くためにはコ…

英語の固有名詞の発音の表記に迷ったときに

https://youglish.com/ 英単語の発音をその単語が実際に発音されているYouTubeのビデオから取り出してくることで教えてくれるサイト。固有名詞の発音を知りたい時には便利そう。

授業のためにどのくらい・どういう準備をしているか

以前「年収160万円」からの脱出、還暦を機に大学教授を目指してみたという記事が話題になった。これは色々突っ込みどころがある記事だが(その続編を見ると著者はたぶんわかってやっていると思う)、一つ気になったのはこういうところだ。 近々の世界の経済…

研究不正に関する本、四冊

授業で教えるために研究不正についての本をいくつか読んだので紹介。背信の科学者たち 論文捏造はなぜ繰り返されるのか?作者: ウイリアム・ブロード,ニコラス・ウェイド,牧野賢治出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/06/20メディア: 新書この商品を含むブロ…

研究資金の減少は、税金の無駄使いを加速している

Scientific AmericanのポッドキャストでRichard Harrisのインタビューをしていた。彼はNPRの科学リポーター(science correspondent)で、Rigor MortisRigor Mortis: How Sloppy Science Creates Worthless Cures, Crushes Hope, and Wastes Billions作者: R…

アブストラクト・イントロダクションの書き方

最近アブストラクトやイントロダクション*1を書くときに使っている公式があるのでメモ。これはカナダや日本で学生のエッセイをいろいろ見た経験から抽出したものなのである程度汎用性があると思う。その公式とは、イントロは以下の(最高)五つの項目につい…

米保守派の研究費たたき

最近あった保守派からの科研費批判だが、米国でも保守派の政治家が科学者の研究費を批判することはよく見られる。たとえばジョン・マケインが共和党の予備選挙の運動でYouTubeに出た時にはモンタナのクマのDNAの研究を批判している(1分50秒ぐらいから)。 y…

外的世界の証明(抄)

授業で使うためにムーアの有名な論文「外的世界の証明」(pdfファイル)のキモとなるところの翻訳を作ったのでご笑覧ください。 例えば、わたしは今、二本の人間の手があることを証明できる。どうやってか。それは二つの手を上げて、右手でジェスチャーをし…

本が出ます

気がつけば二年近く更新がなかったこのブログですが、何もやっていなかったわけではありません。たとえば以下のようなことがありました。 ギゲレンツァについての論文が欧米誌に掲載されました。 種概念についての論文が欧米誌に掲載されました。 博士論文が…

家事分担の進化ゲーム

家事分担は結婚している夫婦の間で頻繁に問題になる事柄の一つだ。家事の負担は多くの場合妻に偏っており、妻はそれに不満を感じていることが多い。これは女性がフルタイムの仕事を持つことが例外ではなくなった現在でもそうだ。どうしたこういうことが生じ…

そもそも重大な問題とは書かれていない

時事問題には反応しないことにしているが、誰も指摘する人がいないので。be動詞など中学レベルの指導をしていた大学が文部科学省から注意を受けたという朝日新聞社のニュースサイトの記事が話題だ。これは文科省の「設置計画履行状況等調査の結果等について…

才能が必要と考えられている分野ほど女性研究者の比率が低い

という論文が「サイエンス」誌に掲載された(リンク)。STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)といういわゆる「理系」の分野では、研究者に女性が占める割合が低いといわれてきた。また社会科学系・人文系の分野でも女性研究者の比率が少な…

冗談と哲学

正月休みの間に留学時にPlato and a Platypus Walk into a Bar . . .: Understanding Philosophy Through Jokes作者: Thomas Cathcart,Daniel Klein出版社/メーカー: Penguin Books発売日: 2008/06/24メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見ると…

哲学専攻は経済的に見合う投資である

と主張する記事があったので紹介。この記事では、PayScaleというサイトの調査を元に、アメリカの大学の学部卒業生を対象にして(したがって大学院に入学した人は入っていない)、専攻によって卒業後の収入がどのくらいになるか、また高卒で社会人になった場…

人種と知能(2)

さて引き続き人種と知能についてだが、今回はニコラス・マッキントッシュが書いた知能についての入門書であるIQ and Human Intelligence作者: N. J. MacKintosh出版社/メーカー: Oxford Univ Pr発売日: 2011/04/30メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリッ…

さて

最近こういう仕事もすることになりましたので、よろしくお願いいたします。