大学は今もレジャーランドか
よく今の大学はかつてのようなレジャーランドではないといわれる*1。ツイッターでは大学教員から、現在の大学は学生に対して面倒見がよくなり、よく勉強させるといわれる(ソース)。これはわたしの体感にも合致しているが、しかしきちんとしたデータを引いているところはあまり見たことがない。
これについて簡単に検索すると、大学生協連合会の調査のデータが見つかった。これによると、2012-17年で大学生の勉強時間は一日290分→302分に増えている。これは文系・理系・医歯薬系に関係ない。
しかしこれだと5年間の推移しかわからない。わたしの記憶によると、「大学=レジャーランド」論が出ていたのは80-90年代(ここに紹介のある竹内洋氏の言葉とも符合する)なので、そこからの推移が欲しい。
これに応じるのが社会生活基本調査の統計である。これは五年ごとの調査で国民がどのような活動に時間を費やしているかが調べられている。この中に小学生から大学院生までの学生が学業にどのくらい時間を使っているかを調べる統計がある。
それをつかって大学生・大学院生の学業に使っている時間を調べると以下のようになる。
86年 | 91年 | 96年 | 01年 | 06年 | 11年 | 16年 |
---|---|---|---|---|---|---|
220 | 209 | 177 | 179 | 210 | 217 | 238 |
これをグラフにするとこのようになる。
見てわかるように、大学生・大学院生の学業に使っている時間は96-01年を底として高まっている。また意外なことに「レジャーランド時代」まっただ中の86年の大学生は学業に結構時間を使っている。
しかしここで重要なのは、80年代よりも現在の方が大学に進学する層が大きく広がっていることである。例えば
- 80年代と現在では大学進学率が異なっている(80年代後半は20%台半ば、現在は50%台半ば)
- また大学生の数も80年代半ばと比べて100万人弱増えている(リンク)
常識的に考えると、こうした大衆化が進むと、以前の世代では大学進学に適さなかった生徒が大学に入ってくるので、大学生の平均的なクオリティは低下しがちになると予測できる。にもかかわらず大学生・大学院生の学業時間が伸びているのは、ここ二十年来の「大学改革」がこの点についてはうまくいっているを示していると言えるかもしれない*2。
ではなぜ今になっても「大学=レジャーランド」論が出るかということになるが、これについては濱中淳子先生が大学で勉強しなかった人ほど大学は役に立たないと述べる傾向にあることを明らかにしているので参照して欲しい*3。