進化論の射程---生物学の哲学入門
このたび以下の訳本が出ることになりました(共訳です)。
進化論の射程―生物学の哲学入門 (現代哲学への招待Great Works)
- 作者: エリオットソーバー,Elliott Sober,松本俊吉,網谷祐一,森元良太
- 出版社/メーカー: 春秋社
- 発売日: 2009/04/01
- メディア: 単行本
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版元の紹介ページはこちらです(Apr.19)。また、BK1のリンクはこちらです。[リンクが間違っていましたので直しました。ブクマで指摘して頂いたbk1checkitさん、ありがとうございました。(Apr. 17)]
著者はザ・生物学の哲学者と言っていいエリオット・ソーバーです。
この本は一般的にいうと生物学の哲学の入門書ということになります。しかし、わたしがこの本を手にとってほしい人の一つは、生物学に興味があるが哲学に興味のない(あるいは無用でおもしろくないと考えている)方です。<生物学+哲学>の組み合わせは、なにやら神秘的なイメージや難解な術語をあやつる訳のわからないものというイメージを持たれるかもしれません。
しかし、ソーバーの議論はそうしたものとはまったくの対極にあります。この本は率直に言って普通の哲学・現代思想の本よりはずっと明快で、しかも議論はおもしろく知的刺激を存分に味わえるはずです。
ソーバーが検討している問題には以下のものがあります。例えば、わたしが担当した章(6章・7章)は体系学と社会生物学について扱っていますが、体系学については
また、社会生物学では
- 社会生物学は遺伝的決定論を支持しているか
- 社会生物学は保守的イデオロギーによって広められているか
- 道徳の進化的起源がわかることによって、客観的な道徳的規範がないことがわかるのか
- 文化進化は生物の進化とどう違うのか
などのトピックについて論じています。
ほかの章では
- ダーウィン主義の進化論の基本構造
- 進化生物学に法則は存在するか
- 知的設計(インテリジェントデザイン)説は科学的仮説か
- 適応度とはなにか
- 進化論と目的論の関係はどうなっているのか
- 進化論はトートロジーか
- 自然選択の単位は何か------遺伝子か、個体か、集団か?
- 進化生物学や進化心理学で非常に人気のある適応主義は正しいのか、そもそも適応主義はテスト可能か
などの生物学の哲学で頻出のトピックを扱っています。生物学の哲学を学ぶ人にとって本書は必読に近いと思っています。
なお訳文については訳者同士でだいぶ検討しましたが、誤りやわかりにくいところ・誤植などは残っておりますでしょうから、見つけた方はお気軽にコメント欄でご指摘ください。<(_ _)>
なおソーバーの訳書はほかに以下のものがあります。出版社は残念ながら廃業してしまいましたが、訳者のかたに連絡すれば、まだ入手可能だと思います。
- 作者: エリオットソーバー,Elliott Sober,三中信宏
- 出版社/メーカー: 蒼樹書房
- 発売日: 1996/07
- メディア: 単行本
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