ということをコンピュータ科学を例にしてThagardと共著者がここで書いている。
この論文ではCrossroadsというACM (Association for Computing Machinery、コンピュータ科学分野の国際学会)が発行している学生のためのオンライン雑誌に掲載されたコンピュータ科学者のインタビューを元に考察している。
著者によると、さまざまなインタビューから創造的な仕事が生まれるときには二つのモードがあるという。それは集中モード(intense mode)とリラックスモード(casual mode)である。
集中モードは、解決したい問題に注意を向けて集中的に取り組んでいるモードである。こうしたときには紙と鉛筆を用いて考えをまとめることが大事である。なおおもしろいことに、多くのコンピュータ科学者は、こうしたときにコンピュータのスクリーンで作業をするのではうまくいかないといっている。紙と鉛筆の方がうまくいくというのだ。またこうしたモードにあるときは、ソーシャルな関係が創造力を増幅させるのに重要である。つまりアイデアを他人に話すことが役に立つ。
これに対してリラックスモードでは、多くの人が、仕事から離れている時にインスピレーションが湧くと答えている。例えばジョギング、ハイキング、ワークアウトなどであり、また車の運転やシャワーもこうしたことが起こりやすいときである。
こうしたリラックスモードでインスピレーションが生じるときの状況には共通の特徴がある。著者の言葉を借りると、
- 問題領域への没入
- 問題に集中しなくてはというプレッシャーがとりあえずはないこと
- 注意をそらすものがない、精神的にリラックスしていること
- ぼんやりとした時間
- 孤独
といったことが共通の特徴である。
しかしリラックスモードにおいてインスピレーションが舞い降りるには事前に集中的に仕事に取りかかっておくことが必要条件になる。問題に取り組んでいないのにただリラックスしているだけでは、よいインスピレーションが生じることはないのである。著者はパスツールのことばを引いて「偶然は準備の整った人に微笑む」(chance favors the prepared mind)と述べている。
創造性を伸ばすためによいこととしてインタビュイーが挙げている(と著者が述べている)のは、他の創造的な作品に触れることである。これは自分の専門(彼らにとってはコンピュータ科学及びその周辺領域)には限られない。たとえば他の科学分野における創造的な仕事、あるいは映画や美術展なども挙げられている。そうしたものに積極的に触れることで創造性のアンテナが反応することがあるというのである。