まとまり日記

私はこういうときでも自分がいじけなかったこと、力むことなくそういう風に育ったのが母への感謝なのである。これは大きかった。恥ずかしさの容量が大きいのは強いのだ。見栄を張らないで生きること、これは何よりも大きな糧である。(森信雄)

一日のどこかで、プロジェクトのことを考える

博士論文を抱えている人に話したアドバイスの中で、ちょっと反応がよかったものがあるのでメモ。

博士論文を書くのにはたいがい時間がかかる。一年から二年かかるというのはほとんど短い方の部類だ。そして博士論文を書くという段階に至った人は、「教える」ということが仕事が入ってくるので、たいてい忙しい。つまり博士論文を書く人は「時間のかかるプロジェクトを、忙しい中で遂行していく」というとても難しいことをこなさざるを得ないことになる。

そうした中で気をつけないといけないことのひとつは、博士論文とは直接関係ない仕事のせいで忙しくしている内に、プロジェクトの詳細を忘れてしまうことだ。わたしの場合でもいろんな仕事に何ヶ月もかまけていて、いざ博士論文のプロジェクトに割ける時間ができたときでも「えっと、今までは何をしていたっけ?」という状態になることが多かった。そうすると以前の状態にアタマが戻るまで何日もかかる。これはとても時間がもったいない。

そこで少し役に立ったのが「できるだけ――とても短い時間でよいので――毎日プロジェクトに関わる活動をする」ということだ。「プロジェクトに関わる活動」というのはもちろんなんでもよい。たとえば今取り組んでいる章のアウトラインメモを毎日読み返すとか、論文に関係する本を数行でもよいので読み進めるとか。そしてたいせつなのは活動をする時間は非常に短いものでよいということ。たとえば「毎日五秒アウトラインメモを見る」と決めたとすると、五秒だけ見る。よほどの非常事態でなければ、一日に五秒の時間もとれないということはないだろう。そして万一非常事態になったとしても、それが一日や二日ぐらいならば、またメモを見ることで自分がどういう状態にあったかすぐに思い出せる。

これを続けていくと、時間ができてプロジェクトを再開したときでも、割と早くに以前の状態を思い出していけることが多かったような気がする。

まあこれがどのくらい役に立つかはわかりませんが、「一日五秒、プロジェクトのことを考える」というのは金銭的・時間的・精神的コストがほとんどかからない方法なので、興味のある人は試してみてください。